私一人を救うのが仏教……？

子どもの頃、父親（前住職）が仏教について食事中に熱弁することがありました。

当時の私にとっては言葉が難解で、聞き流すこともありました。が、ある日、とうとう「仏教って結局なんやねん？」と質問しました。

父親は「なんやと思う？」と訊き返します。

私は少し考えて「みんなが救われる話と違うんか？」と尋ねると父親は「お前が救われる話や」と返事をくれました。

私は、一人だけ救うというのも、なんとも狭量であるなぁ、と一笑にふした記憶があります。ただ、「いずれ分かる」という父親の言葉は印象的でした。

時は流れ、仏教とは何か。もし、あらゆる有情を救うものが仏教であるなら、やはりその中には「私」が間違いなく含まれているのです。

さて、この「私」どのような命でありましょうか。

仏教には地獄という考え方があり、その生き方によってつぶさに分けられています。

そうでなくても、わが身を顧みれば、お浄土で仏様の下に向かうより、地獄でもがいている方がしっくりくるんですよね。私の場合ですが。

やはり、仏様の救いは「私」なのです。私以外は救わない、そうではありません。言い換えれば、生けとし生ける「私」をお救い下さいます。

とにもかくにも、人の事を考えている場合ではなく、「私」の命を問題にしなければならないのでしょう。